法律Q&A

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過労による自殺は労災と認められるのか?(P6-7)

(1)自殺と労災申請・賠償請求の急増
 急増し、深刻化する自殺に対して、いわゆる過労自殺としての労災認定申請、企業に対する賠償責任を求める動きは、電通事件(最判平12.3.24労判 779-13)が、企業の賠償責任を厳しく判断したことにより一挙に加速されました(最近の三洋電機事件・浦和地判平成13.2.2労判800-5等参照)。
(2)過労自殺の労災認定
[1]労災認定新基準
前掲・電通事件最高裁判決やその後の同様の賠償認容例の続出や、直接に過労自殺を労災と認める判例の出現等を受け、厚生労働省は、以下のような過労自殺の労災認定に関する新認定基準を公表しました(平成11.9.14基発第554号。新基準)。

a)分類の国際基準化
先ず、労災認定の対象となる精神障害(対象疾病)につき、原則として国際疾病分類第10回修正(「ICD-10」)第Ⅴ章「精神および行動の障害」に分類される精神障害としました。

b)対象疾病の拡大
対象疾病の内、主として業務に関連して発病する可能性のある精神障害は、ICD-10のFOからF4に分類される精神障害に拡大されました。しかし、過労自殺損害賠償事件においては、既に、反応性うつ病罹患の有無や、うつ病と業務との因果関係などを厳格に認定判断することもなく、過重業務と自殺との因果関係、企業の損害賠償責任を認めるものも現れています(協成建設事件・札幌地判平10.7.16労判744-29)。

[2]判断要件
精神障害の労災認定に当たっては、次のa)、b)及びc)の要件のいずれをも満たすことが必要とされ、その際の心理的負荷の強度の評価については、労災保険制度の性格上、本人がその心理的負荷の原因となった出来事をどのように受け止めたかではなく、多くの人々が一般的にはどう受け止めるかという客観的な基準によって評価される、としています。つまり、a)対象疾病に該当する精神障害を発病していること、b)対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、客観的に当該精神障害を発病させるおそれのある業務による強い心理的負荷が認められること、c)業務以外の心理的負荷及び個体側要因により当該精神障害を発病したとは認められないこと、の3要件です。

[3]各種要因の総合的評価
[2]のa)により精神障害の発病が明らかになった場合には、同b)、c)との各事項について各々検討し、その上でこれらと当該精神障害の発病との関係について総合判断します。なお、この点、新基準は、明確に、恒常的過重労働がある場合には、いわば下駄をはかせた判断をすることを指摘しています。

[4]自殺の取扱い
a)精神障害による自殺
更に、自殺につき業務による心理的負荷によってこれらの対象疾病が発病したと認められる者が自殺を図った場合には、精神障害によって正常の認識、行為選択能力が著しく阻害され、又は自殺行為を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態で自殺が行われたものと推定し、原則として業務起因性が認められる、としました。

b)遺書等の取扱い
遺書等の存在について、それ自体で正常な認識、行為選択能力が著しく阻害されていなかったと判断することは必ずしも妥当ではなく、遺書等の表現、内容、作成時の状況等を把握の上、自殺に至る経緯に係る一資料として評価する、とされました。

(3)過労自殺に対する損害賠償請求での注意点
 過労自殺の原因が前述の恒常的過重労働にある場合、企業の従業員に対する健康配慮義務違反による損顔賠償責任が問われることになります。その際の従業員や遺族の側での企業の対する賠償請求時の注意点は前述の過労死の場合と同様です(P6-6参照)。

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