法律Q&A

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企業が倒産したときの従業員の身分は?(P7-13)

(1)倒産の現状と賃金債権の関係
 先ず、後述(3)のように、すべての倒産が直ちに従業員の雇用の喪失に結ぶ着く訳ではありません。先ず、倒産に際しての賃金債権の保護の観点を中心に説明しますと、一口に企業倒産といってもその内容は様々で、大別すると、倒産として扱われるものには、裁判所への破産や会社更生手続開始等の申立てによるものと、それ以外の手形、小切手の不渡りを出し、銀行取引停止処分を受ける等の事実のみによるものの2つのタイプがあります。そして、企業倒産の約2割は破産法や会社更生法等の倒産法に基づく「法的整理」によっていますが、そのうち多くは破産法を、特に、最近は民事再生法の適用を受けるものとなっていいます。しかし、例えば、破産法における労働債権の順位は必ずしも高くなく、労働債権が十分な弁済を受けているとは言い難い状況です。また、倒産全体の残りの約8割は倒産法の外で処理がなされる「任意整理」が占め、ここでは労働債権の回収はさらに困難となっています。すなわち、「任意整理」の場合、一応の手続がなされる場合も含めて、結局は早い者勝ちとなるケースが少なくないことが指摘されています(賃金債権の保護に関しては、菅野和夫「労働法」第5版補正2版235以下参照)。
(2)倒産手続の類型
 企業が倒産した場合の手続としては、前述のように、倒産法制に基づいて処理がなされる「法的整理」と、倒産法制の外で処理がなされる「任意整理」があります。また、法的整理は、その目的の違いにより、さらに最終的には企業を解散し配当して消滅させる清算型手続(破産手続、特別清算手続)と、企業を大規模な債務の棚上げ、リストラやM&Aなどの各種の方法を駆使して再生させる再建型手続(会社更生手続、民事再生手続、会社整理手続)に区分され、任意整理にも清算型と再建型があります。
(3)倒産時の従業員の身分
[1]倒産=解雇ではない
前述のようにすべての倒産が直ちに従業員の雇用を喪失させるとは限りません。

[2]再建型の場合
前述(2)の倒産手続の類型からも分かるように、再建型の場合は、基本的に企業の事業は継続されることから、リストラがあるとしても全員の雇用喪失に直結はしません。この場合は、前述(P7-7参照)の整理解雇の法理により、いわゆる4条件の存否が問われます。従って、いきなりの解雇はなく、希望退職やグループ・関連企業への出向・転籍等の各種の雇用調整手続が先行される場合がほとんどですが、最終的には相当数の従業員の整理解雇もあり得ます。その場合には、一般には、第一条件の「人員削減の経営上の必要性」は認められ易いでしょう。

[3]清算型の場合
清算型の場合、最終的には、任意整理ではいわゆる休眠状態にして自然消滅(会社の場合には職権解散等)の場合もありますが、少なくとも、法的倒産手続では企業が解散し、清算手続終了時に消滅となります(会社解散後に新会社を立上げ、事業が、資本・役員構成・事業内容・従業員等において実質的に一体の状態で継続されるような場合に、一部の従業員のみが新会社に雇用を承継されない場合、消滅による自動終了とせず、整理解雇の要件が必要とされるこがあります。例えば、新聞西通信システム事件・大阪地決平6.8.5労旬1346-59参照)。そして、企業の消滅の場合は、契約の当事者が喪失する訳ですから、労働契約も終了します。実際には、その清算過程で前述の再建型におけると同様の整理解雇がなされることがほとんでしょう(民法631条は使用者が破産した場合の解約権を規定しています)。しかし、この場合には、 緊急度や企業規模にもよりますが、希望退職等の段階的雇用調整手続無しに解雇となり、その手続が適正・正当なものである限り、解雇は有効とされる可能性は高いでしょう。

[4]労基法20条の適用
なお、清算型の清算終了による労働契約終了を除いて、倒産理由の解雇には、原則として労基法20条の解雇予告又は予告手当が必要なことは勿論です。

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