- (1)福利厚生又は処遇上の問題
- 制服の着用義務の問題は、法的には福利厚生か処遇上の問題と考えられますが、均等法は、従前から(旧均等法10条、改正均等法7条)、福利厚生の面での男女差別的取扱いが禁止されていましたし、改正均等法は、処遇上の差別的取扱いを禁止しています(同6条。P9-2参照)。厚生労働省の指針では、差別禁止対象の福利厚生措置の具体的な範囲としては、住宅資金の貸付けのほか、供与の条件が明確で相当程度の経済的価値を有するものが施行規則1条で定められています。具体的には、生活資金、教育資金その他労働者の福祉増進のために行われる資金の貸付け、生命保険料の一部補助、子供の教育のための奨学金支給等、労働者の資産形成のために行われる金銭の給付、財形貯蓄に対する奨励金の支給等、住宅の貸与などが挙げられています。
- (2)女性のみの制服着用義務は
- 女性のみの制服着用の義務付けが違法か否かがマスコミなどでも問題となっていますが、厚生労働省の見解では、疑問はありますが、制服は、ここでの福利厚生に当たらないとされています。実務的には、最近はむしろ企業が、経費節減の面からも制服廃止に積極的なのですが、一部の女性の遅れた既得権意識もあり、経過措置として私服と制服の選択制にして対応しているところもあるようです。
しかし、法理論的には、単なる制服の貸与なら別として、制服の女性のみの着用義務とすれば、処遇上の差別として、厚生労働省の「配置、昇進及び教育訓練に係る女性労働者に対する差別の禁止指針」における「一定の職務への配置に当たり一定の資格を有することその他の条件を付す場合において、女性労働者に対して男性労働者と異なる条件を付すこと」の「一定の職務への配置に当たり...その他の条件を付す場合」に該当する疑いを禁じ得ません。女性のジェンダーフリー意識の成熟に期待せざるを得ません。