法律Q&A

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思い違いに基づく契約の効力は?

弁護士 中村 博(ロア・ユナイテッド法律事務所)
1997年4月:掲載

土地の値段が上がると思い土地売買契約を締結したが見込み違いであった場合、契約は効果がありますか。

甲社は不動産販売会社ですが、2年ほど前に甲社所有のある土地の近所に大きなショッピングセンターが建設される計画が明らかとなったので、甲社はかなり高い値段でその土地を乙社に売却しました。しかし、売却して数ヶ月後にその計画が計画倒れとなり、今では、売却した土地が売却当時の30%程度の値段にまで落ち込んでいます。最近になって、乙社が売買契約は無効だという理屈をつけて甲社に抗議していますが、この主張は認められますか。

契約の際に、ショッピングセンター建設の話が具体化され、契約内容になっていたような場合にのみ契約は無効になります。

1.契約の無効とは?
 設問[1-1-3]で説明したように、契約は当事者の意思表示の合致があってはじめて成立するものですが、一旦成立が認められたとしましてもその契約内容に瑕疵(いわゆる欠陥のことです)がある場合には、その契約は無効あるいは取消しうべき行為となります。そして、どのような瑕疵が無効原因あるいは取消原因となるのかはその国の立法政策の問題です。そして、一般には、【1】当事者が能力(意思能力・行為能力)を有すること、【2】契約の目的が可能且つ適法で、社会的妥当性を有し確定しうるものであること、【3】意思表示につき、意思と表示が一致し瑕疵がないことの3つが契約の有効要件と考えられており、我が国の民法は、設問[1-2-1]のような行為能力が欠けた場合を取消事由とし、本文のような意思表示の錯誤の問題を無効原因として処理しております(同法95条)。無効とは、当事者その他特定の人の主張を必要としないで当初から当然に契約等の効力がないことで、当事者はもちろんのことすべての人が最初から効力がないものとして扱わなければならないのです。
2.錯誤の種類と動機の錯誤
 意思表示の錯誤とは、簡単に言えば思い違いのことであり意思表示をした者が自分の誤りに気づかない場合をいいます。錯誤を分類すると次のようになります。

(1)要素の錯誤
要素というのは契約内容の中での重要部分のことであり、その重要部分に錯誤があればもともと契約はしなかったという場合。
契約内容の些細な点までに錯誤無効の主張を許すとあまりに取引の安全を害するために、民法が錯誤無効の主張を制限したのです。

(2)表示上の錯誤
10万円なのに100万円と書いてしまったような場合です。誤った表示内容が「要素」に該当する限り、錯誤主張が認められます。

(3)内容の錯誤
保証と連帯保証を同じと考えてしまって契約してしまったような場合です。誤った内容が「要素」に該当する限り、IIと同様錯誤無効が認められます。

(4)動機の錯誤
表示と心の中の真意にはずれがないが、真意を生じるまでの過程に勘違いが存在する場合ですが、本設問のような場合が典型事例です。動機の錯誤をどのように扱うかについては、学説や判例で争われておりますが、判例は動機に錯誤があってもそれだけでは「要素の錯誤」ではないが、その動機が表示されていれば契約の重要部分となり「要素の錯誤」となるという立場に立っているようです(最判昭37・11・27)。

対応策

乙社は、ショッピングセンターの建設計画を信じ且つ値上がりを見込んで甲社から本件土地を購入するに至ったことから、計画の中止により大きな打撃を受けるに違いありません。しかし、甲社は本件土地を間違いなく乙社に売却しており、原則としては、乙社の見込みは単なる乙社の自分勝手な期待に過ぎなかったという理由で乙の抗議など気にする必要はないでしょう。
しかしながら、甲社が契約締結の際に乙社に対して「本件土地の周辺にはショッピングセンターの建設計画があり、便利になる」というような説明をしたりしていたならば、ショッピングセンターの建設は契約の「要素」をなすものだということになりますので、乙社の無効主張を認めざるをえないことにもなります。ただ、乙にショッピングセンターの建設計画が中止になることに気が付かなかったことについて「重大なる過失」があるような場合は、乙社の無効主張を争うことが出来るのです(同法95条但書)。

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