法律Q&A

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請負契約のポイント

弁護士 中村 博(ロア・ユナイテッド法律事務所)
1997年4月:掲載

請負契約を締結する際に気をつけるべきところは何ですか。

甲社は、この度新しい事務所を開設することとなりその為の土地を購入しましたが、これから事務所の建築に着手しなければなりません。取引先から紹介してもらった乙社に工事をお願いしようとは思っているのですが、何しろこのようなことは初めてなので、トラブルがおきないようにしようと思います。注意点を教えてください。

本件のような場合は、建設業法で契約書の作成が義務づけられております(ただし、契約の効力には関係ありません)ので注意してください。

1. 請負代金とその方式
 請負代金とは、請負人がある仕事を完成させ、注文者がその仕事の結果に対して一定の報酬を支払うという契約です(民法632条)。建物の建築や増改築、土木工事などを業者に頼んでやってもらう場合などが典型例です。請負契約を締結するためには特別の方式は必要とせず、注文者と請負人の間の合意だけで契約は成立します。ただし、建設工事の請負の場合には、無用の紛争を防止するために、工事内容、請負代金額、工事着手の時期や完成時期、請負代金の支払い時期など一定の事項を記載した書面を交付しなければならないことになっています(建設業法)。設問[1-1-2]で述べたように、契約書をきちんと作ることが重要であることはもちろんですが、手抜き工事をされたり、代金を一部前払いしたのに完成前に請負業者が倒産し工事が未完成のまま放置されたりして注文者が困るケースもありますので、信用があり事業規模のしっかりした業者を選ぶことも重要なポイントです。
2. 請負契約のポイント
(1)仕事の完成
仕事を完成して注文者に引き渡すことが、請負人の基本的義務です。これに対して請負代金という報酬をもらうことになります。仕事を完成する方法には、請負人が自分自身でするほか、特に支障が無い限り下請負に出すこともできます。もっとも、建設工事の場合は一括下請けは禁止されていますので、部分的な下請けしかできません。

(2)請負代金の支払時期
請負契約の目的はある一定の仕事を完成させることにありますから、請負人の報酬(請負代金)は、あくまで仕事を完成した後に、その引渡しと引き換えに支払われる(後払い)のが原則です(民法633条)。従って、請負人は代金の支払いがあるまでは、完成した仕事の引渡しを拒む権利(留置権)があります。ただし、建設工事の請負の場合には、契約時に3分の1、上棟時に3分の1、引渡し時に3分の1、という代金の支払方法も多く行われています。

(3)危険負担をどう負うか
危険負担については、設問[1-2-4]で述べましたが、請負契約の目的は仕事を完成させることにありますから、完成前に工事中の建物が地震で崩れたり類焼した場合には、請負人はもう一度始めから工事を遣り直して完成させなければなりません。そうしないかぎり代金はもらえないのが原則です(債務者主義)。そこで、これでは請負人のリスクが大きく不利ですので、保険でカバーしたり、特約によって損失の公平な分担を定めておく方法が取られています。なお、一定の請負代金で工事を請け負った後に材料費が値上がりした場合、その値上がり分は原則として請負人が負担する事になります。

(4)所有権はどちらにあるのか
請負人が仕事を完成して注文者に引き渡してしまえば、完成した仕事の所有権が注文者に移ることは明らかです。しかし、完成して引き渡される前の建設中の建物の所有権は、注文者と請負人のどちらにあるのかということが問題になります。この場合、特約があればそれに従いますが、特約が無ければどちらが材料を提供したかによって決まります。注文者が全部の材料を提供したときは完成した仕事の所有権は注文者にありますが、請負人が全部提供したときは、完成した仕事の所有権は請負人にあり、注文者に引き渡すことによってはじめて所有権は注文者に移ります。また、注文者と請負人の両方が一部ずつ材料を提供したときは、どちらの材料の価格が大きいかによって決まります。請負契約の中にどちらが材料を提供するかを明示しておくと、無用の紛争が避けられます。

(5)完成の遅延と損害金
請負契約で工事完成・引渡し時期を定めておいても、工事の進行が遅れることがあります。約束の時期になっても家が建たず、引越しできないで困るといったケースもあります。このような場合に、注文者の損害をいくらの金額に見積もるかということは必ずしも容易ではありません。そこで、あらかじめ請負契約の中で工事遅延の損害金を決めておくという方法が良く行われます。これによって損害の算定についての紛争を防止できるとともに、工事の進行を促進させるという効果も期待できます。もっとも、博覧会に出店するための店舗などのように、完成が遅延することによって契約の目的が達成できない場合には、注文者は契約を解除することもできます。

(6)請負人の担保責任
新築した家屋が雨漏りするなど、完成した仕事に欠陥(瑕疵)がある時は、注文者は請負人に対してその欠陥部分の修補と損害賠償を請求することができます。これが請負人の担保責任です。欠陥の修補は、その修補に必要な相当期間を決めて請求します。注文者は、修補の請求をしないで(同法634条1項本文・2項)、損害賠償だけを請求することもできます。ただし、欠陥があまり重大なものではなく、しかもその欠陥の修補に費用がかかりすぎる場合には、損害賠償の請求ができるだけで、修補の請求はできないことになっています(同法634条1項但書)。なお、欠陥の程度がひどく、修補や損害賠償だけではとても我慢できず、建物を取り壊して立て直したいと思っても、家屋のような「土地の工作物」の請負の場合に限り、契約の解除はできないことになっています(同法635条但書)。請負人が担保責任を負う期間は、引渡し後一年間というのが原則です(同法637条1項)。ただし、一年以内に修補や損害賠償の請求をしておけばよく、裁判を起こすまでに必要はありません。但し、その請求は、後日のために配達証明郵便でしておくのがよいでしょう。なお、右の担保責任期間は、家屋などの土地の工作物については、木造家屋については5年、鉄筋コンクリート造りの建物については10年とされています(同法638条1項)。

(7)注文者の契約解除権
注文者は、仕事が完成するまでの間はいつでも請負人の損害を賠償して契約を解除することができます(同法641条)。必要のなくなった仕事を無理矢理完成させることは無駄ですから、請負人の損害さえカバーされれば契約の解除を認めてもよいではないかということです。そして、この方法による解除は、たとえ請負契約の中にそのような条項を入れていない場合でも可能です。契約を解除するときに注文者が支払わなければならない損害額とは、請負人が既に購入した材料費や職人の手当などの費用のほかに、仕事を完成した場合に請負人が得られる利益も含まれます。なお、工事に着手する時期が過ぎてもいつまでも工事を始めないなど、請負人に契約違反があったときには契約を解除できることは一般の契約と同様です。

対応策

まず、乙社について、信用があり、事業規模がしっかりしているかを調査すべきでしょう(設問[1-1-1]参照)。次に代金の支払い時期をしっかり明示した上で、災害に備え、請負人から保険の申し出がなされた場合は、これに応じるべきでしょう。3番目に目的物の完成の遅延の場合の損害金をしっかり明示しておきましょう。
その他の点については、解説を参照してください。

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