法律Q&A

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株式の担保権者への対応

弁護士 船橋 茂紀
1997年4月:掲載(補正:岩出 誠 2008年11月)

株式に質権が設定されていることを公示する方法がありますか。

株式の担保権者が株主名簿の書換えを請求してきました。会社はどのように対応したらよいですか。担保権が実行された場合はどうですか。

はい。株主名簿と株券とに記載します。これを登録質といいます。

1.株式についての担保設定
 株式についての担保の設定

株式は経済的価値のある権利ですから当然担保の対象となります。株式についての担保方法としては、譲渡担保の方法と質権設定の方法とがあります。質権設定の方法にも、株主名簿及び株券への記載の有無に応じて略式質と登録質とがあります。

2.質権設定の方法
(1)
会社法では、会社は原則として株券を発行しないものとし、株券の発行を定款で定めた場合に限って株券を発行することとした(214条)。

(2)
株券発行会社では、株主が債権者との間で質権設定の合意をし、株券を交付することで成立します(会社法146条2項。なお、質権者が、質権の設定を第三者に主張(法律的には対抗といいます)するには、株券を継続的に占有しなければなりません[同法147条2項3項])。株主の承諾を得て質権設定者の住所及び氏名を株主名簿に記載した場合を登録質(同法148条)といい、それをしない場合を略式質(同法147条)といいます。質権設定の事実が他に知られることが嫌われるため実務上登録質はほとんど利用されていませんが、登録質の場合は、略式質の場合に比べて質権者の地位が強化されています。即ち、登録質においては、目的物の払渡又は引渡前に差押をすることなく、物上代位権を行使して、直接、目的物の払渡又は引渡を受けることができます(同法152乃至154条)。目的物としては、剰余金の配当、残余財産の分配、株式の併合・分割・交換・取得により株主が受け取る金銭等があります。通常、物上代位権を行使するには目的物の払渡又は引渡前に差押をしなければならないとされており(民法304条1項但書)、略式質においては、原則として、その目的物が会社から質権設定者に対し払渡又は引渡前に差押えをしなければならず(同法362条2項、350条)、登録質の効力の方が強いということになります。
なお、平成17年改正前商法のもとでは、略式質の効力は利益配当請求権(会社法では剰余金配当請求権となりました)に及ばないとした判例がありました(東京高判昭和56年3月30日判時1001号113頁)。しかし剰余金の配当も株式の財産的価値の一部実現であることに鑑み、略式質であっても物上代位的効力を主張できるとし(151条8号)、この点において両者に違いはなくなりました。

(3)
株券不発行会社の場合には、株式の質権者は、その氏名と住所を株主名簿に記載しなければ質権を会社その他の第三者に対抗することができず、登録質の方法によることになります(会社法147条1項)

(4)
質権の実行は、競売(売却代金から優先弁済を受ける方法)又は流質契約による代物弁済(被担保債権が商行為によるなど特定の場合に限られます)です。

(5)
なお、譲渡制限がなされている場合でも、質権の設定自体については取締役会の承認は不要ですが、質権実行による株式については取締役会の承認が必要です。この場合、株式取得者が取締役会の承認を求めることになります(会社法137条)。

3.譲渡担保の方法
 債務を担保する趣旨で株主から債権者に対して株式を譲渡する方法ですが、譲渡担保設定の合意と株券の交付によって成立します。この場合、株主名簿の名義書換(譲渡担保権者は株主として記載されます)をしなければ譲渡担保権の設定を会社に対しては対抗できませんが、当事者間では有効です(名義書換をする場合を登録譲渡担保といい、しない場合を略式譲渡担保といいますが、登録譲渡担保はほとんど利用されていません)。また、譲渡制限がなされている場合には、譲渡担保権の設定について取締役会の承認がなければ会社に対する関係では効力を生じませんが、当事者間では有効だと考えられています(最判昭和48年6月15日民集27巻6号700頁)。債務者が債務を完済すれば株券の返還を受けますが、返済を怠れば、債権者は、株式を評価して、自ら取得し(帰属清算型)あるいは第三者に売却する(処分清算型)ことになります。その場合、株式取得者が株主名簿の名義書換請求をすることになります。
4.略式質と略式譲渡担保
 設定された担保が、略式質であるのか、略式譲渡担保であるのか不明な場合が多々あります。この場合、略式質と略式譲渡担保とでは、後者の方が担保権者に有利ですので、後者を設定したと推定されると考えられています。

対応策

設定された担保が質権なのか譲渡担保権なのかを確認し、請求者において不明確であれば譲渡担保権と扱うべきでしょう。譲渡担保権であれば名義書換の一般的方法(設問[3-2-6][3-2-7]参照)に従って所定の確認をした後、株主として名義書換をし、質権であれば質権者として表示します。なお、株券への記載も忘れずに行いましょう。譲渡制限がなされている場合には、譲渡担保権者の請求を拒絶できます。

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