法律Q&A

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債権保全

弁護士 相川 泰男
1997年4月:掲載(校正・小林 昌弘2001年2月)(再校正・村木 高志2007年12月)

債権を保全し、回収を確実にするための方法としてはどのような法的手段があるか。

当社と継続的に商品の売買を行っている取引先が信用不安に陥り、資金繰りが苦しくなっているようです。
このままでいきますと、当社の売掛金債権は焦げつく可能性もありますので、早期に債権回収を図りたいと思っています。売掛金の回収を確実に図るためにはどんな方法があるのか教えてください。

他の債権者よりも優位な立場を事前に確立することが債権回収のポイントです。

 取引先が信用不安に陥ると、その債権者は、確実な債権回収手段を考え、できるだけ焦げつきが生じないようにしなければなりません。
しかし、そのようなことは取引先に対して債権を持っている債権者が皆考えることです。つまり、債権回収は早いもの勝ちの要素もあります。
取引先の信用不安における債権回収には、いくつかの方法がありますので、以下に説明します。
1.ねばり強い請求
 請求するというのは、当たり前のことですが、請求の仕方によっては、相手方が弁済に応じることもあります。何度も請求書を送りつける、弁護士による内容証明郵便の活用、しつこく朝から晩まで催促の電話をするなどです(しかし度を越すと業務妨害罪などで告訴されることもあり得ますので注意が必要です)。いわゆるサラ金などの消費者金融業者は、これによって相当の成果をあげています(もっとも、過度な取立て行為は貸金業の規制等に関する法律により禁止されています)が、いずれにせよ、行き過ぎた請求は注意が必要です。
もっと、計画倒産の疑いのある相手方など、悪質な債務者には、この方法を用いて、さらに悪質な債務者には、刑事告訴をすることも辞さない覚悟で臨みましょう。
2.仮差押
 債権回収を裁判上で行う前に、勝訴判決に基づいて強制執行する債務者の財産を予め差し押さえておくものです。仮差押をしておけば、仮差押にかかった財産から優先的に後日回収することが可能です。要件などの詳細は、設問[5-1-3]の解説を参照してください。
3.債権譲渡
 債務者の持っている債権を譲り受け、直接債務者の債務者(法律ではこのような債務者の債務者のことを第三債務者といいます)から弁済を受けて、債権の回収を図るものです。
債権の譲渡は契約で行い、債権者と債務者の間で行うことができます(民法466条)。ただし、これを第三債務者に主張するには、債務者の方から通知をしてもらうか、第三債務者の承諾が必要です。
ただし、債権は目に見えないものですから、二重に譲渡されてしまう可能性があります。そのような場合でも他の債権者に勝てるよう、確定日付のある通知または第三債務者の承諾をもらう必要があります(民法467条2項)。
確定日付は、公証人役場に行けば、公証人が押してくれますが、郵便局の内容証明郵便は確定日付と同様の効果があります。なお、譲渡の通知は、第三債務者に到達して効力が生じますから、内容証明郵便を送るときには必ず配達証明付の内容証明郵便にしなければなりません。
また、債権は法律上譲渡が禁止されているもの(社会保険給付請求権等)や特約で譲渡が禁止されているものがありますので注意が必要です。
債権譲渡を受けても、第三債務者が債務者に対して反対債権を持っている場合には債権譲渡を受けても、相殺で対抗されてしまいますので、第三債務者と債務者の権利関係の調査も要求されるときがあります(これは、債務者が敷金返還請求権を持っているものの、家賃の未払いが継続していたために、敷金と家賃が相殺されるときを念頭に入れていただければお分かりかと思います)。
4.代理受領
 債権譲渡が禁止されているなどで債権譲渡が受けられない場合でも、代理受領という方式で回収を図ることが可能です。
これは、債権は譲渡をせずに、債権回収の代理権を自分の債権者に与え、且つこの債権者が受領した金員を自己の債権回収に充てるものです。
債権譲渡の手続のような面倒な手続がいらないので、よく利用されますが、一方、もとの債権者も受領権限を持つために、回収に代理受領できる保証がないのと、代理受領も契約ですから、解除されると受領権限を失ってしまいます。
したがって、代理受領によって債権回収を図るときには、代理受領契約書中に、解除をしないことと、債権の回収は代理権を与えられた者のみが行い、もとの債権者は勝手に受領をしないという特約をつけておくのが賢明でしょう。
5.代物弁済
 これは、例えば、1000万円の債権を有している債権者が、債務者から1000万の金銭の支払いを受ける代わりに、その額に相当する物(不動産、動産)の給付を受けることで債権を消滅させるものです。
代物弁済は所有権が完全に移転したところで効力が生じます。代物弁済の注意点は設問[[5-2-8]の解説で説明することといたします。
6.相殺
 債権者Aが債務者Bに債権を有する一方で、BもAに債権を有しているというときには、Aは相殺で双方の債権を消滅させることができます。例えば、売掛先から予め保証金をとっておけば、売掛先の未払いがあったときには、売掛金請求権と、売掛先の保証金返還請求権とを相殺してしまうわけです。
相殺は、契約ではありませんから、債権者側の一方的な意思表示で行うことが出来ます。意思表示は後日の紛争防止の意味からも相殺通知書というような内容証明郵便で行うのがよいと思います。
相殺は非常に簡単な債権回収の方法ですが、少なくとも相殺する側(債権者)が債務者に対して有している債権の弁済期が到来していることと、相殺する債権が同種の債権(通常はどちらも金銭債権)であることが必要です。
また、相殺には相殺できないいくつかの例外的な債権があります(民法507条以下)ので注意してください。

対応策

このように、取引先の信用不安状況における債権回収の手段はいろいろあります。しかし、事後的に債権回収の手段を講じるよりも、取引開始時等に既に債権回収が容易になる方法を講じておくべきでしょう。取引先が信用不安の状況に陥ったときに取引先にまだ財産があればこれらの手段を講ずることができますが、全く財産がなくなっていれば、それすら行うこともできなくなるからです。事前に債権回収を容易にしておく方法としては、例えば、充分な不動産を抵当にとるとか、社長の個人保証をとりつけておくとか、保証金をとっておいていざというときには相殺するとか、商品を所有権留保で売買して、倒産のときには容易に引き揚げられるようにするなどがあります。他の債権者よりも優位な立場を確立しておいて取引を行うことが債権回収を容易にするポイントと言えるでしょう。

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