法律Q&A

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希望退職・早期退職者優遇制度等

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2001年2月:掲載

希望退職・早期退職者優遇制度で優秀な人材流出の防止するにはどうしたら良いか?

A社では、業況が芳しくなく、人員の削減が必要になりました。しかし、いきなり解雇というのでは、従業員の反発も心配で、裁判などに発展するのも困りますので退職金の上積みをして、希望退職を募りたいと思っています。又、人材の若返りを図る意味でも、かつ、会社に依存しない自立を望む従業員をサポートする形で中高年者の退職を進めるため早期退職者優遇制度を導入しようとも考えています。しかし、その際に、不公平な気もしますが、本音では、A社にとって残ってもらいたい人まで退職されては困ります。そこで、そのようなことを防ぐにはどうしたら良いのでしょうか?

希望退職や早期退職者優遇制度の適用につき、申し込まれた者の内、A社が承認したものに限る旨の、いわゆる逆肩叩き条項の挿入により、優秀の人材がこれらの制度を利用することを防止できます。

1.人員削減圧力の継続
我国の景気は、最近の株式相場の混迷を見ても、依然先行き不透明な状態が続き、むしろ、グローバライゼーション、メガ・コンペティションの進展下、企業の経営環境は、その深刻度を増しています。これを受けて、多くの企業内で依然として経営のスリム化等の合理化が、目先の業況の動向にかかわりなく進められています。その大きな柱の一つが、経営における大きな支出項目である人件費の削減=人員の削減であることは論をまちません。
2.人員削減方法としての退職者優遇制度とその問題点
その削減策として、退職金支給率の割増、退職金額の上積などの優遇をなす希望退職が、それ独自に行われる場合もあれば、最終的な手段としての整理解雇についてのいわゆる四条件中の解雇回避努力義務の一環として行われる場合があります(いわゆる四条件については、9-5-1参照)。他方、定年前の一定期間に退職した者に対し、退職金等につき同様の優遇をなす早期退職者優遇制度が、実質は希望退職と変わらない場合もありますが、建前的には人事ローテーションの円滑化・活性化等のため利用されることもあります。
しかし、これらの退職者優遇措置の実施については、従来から、優秀な人材の流出防止策の可否などの問題があることが指摘され、それらへの検討が求められていたところ、最近、相次いで、これらの問題に関する判例が示されました。
3.退職者優遇制度をめぐる判例の動向
先ず、退職者優遇措置の適用について、企業が行った希望退職等の「募集」の法的意味が問題となります。例えば、問題のように、一定の年齢層や部署への募集の際に、これに応募すれば当然に優遇措置の適用を受けられるのか、あるいは、企業が必要と認めた人材には優遇措置の適用を拒否できるのかと言う問題です。この点に関して、判例は、募集は労働契約合意解約の「申込の誘引」(広告のようなもの)であって申込ではないとして(津田鋼材事件・大阪地判平11.12.24労判782-47、大和銀行事件・大阪地判平12.5.12労判785-31)、企業による募集の撤回を認めたり、あるいは、募集条件の優遇措置の適用には会社の承認を要する旨の条項(いわゆる逆肩叩き条項)が、退職により企業の業務の円滑な遂行に支障が出るような人材の流失を回避しようとするもので公序良俗に反するものではなく有効であるとして、企業の承諾(承認)ない者への適用を排除することを認めています(ホーヤ事件・大阪地判平9.10.31労経速1674-26、大和銀行事件・前掲等)。しかし、49歳と50歳以外の従業員(47歳~54歳)の応募については、優遇規定を「準用」する旨の規定の不備を突かれて最高額と同額の優遇措置の適用を認めた例もあり(朝日広告社事件・大阪高判平11.4.27労判774-83)、企業としては、上記のような承認条項等の規定の整備が必要です。
その他、優遇措置につき、一律・平等な適用が求められたりすることがありますが、判例は(住友金属事件・大阪地判平12.4.19労判785-38)、退職加算金は退職勧奨に応じる対価であり、勧奨の度合いによってその時期や所属部署によりその支給額が変わっても、その応諾は労働者の自由な意思によるものであるから、平等原則に違反することはないとして、企業には特定部門の一定の時期に支払ったと同じ優遇措置を別の部門や異なる時期の退職労働者に適用する義務はないとしています。なお、ある労働者の退職届の時点では優遇措置の計画がなされていない以上、退職の効果発生以後に公表された優遇措置を過去の退職者に適用する義務はないとされています(イーストマン・コダック事件・東京地判平8.12.20労判709-12)。

対応策

以上の次第で、「回答」の通り、上記のような承認条項(いわゆる逆肩叩き条項)等の規定の整備が必要で、これにより、少なくとも、人材の退職者優遇制度利用による流出は防止できます。

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