法律Q&A

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派遣社員のスカウト

弁護士 岩出 誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)
2000年10月:掲載

派遣社員を正社員にしようとしたら?

設計会社A社は、自社の設計用コンピューター(CAD)を使いこなす技術者が不足していたので、人材派遣会社B社に派遣社員Cを派遣して貰っていましたが、A社の社長はCの勤務振りに感心し、是非Cを正社員として採用したいと思うようになりましたが、どうしたら良いでしょうか。B社との関係はどうなるでしょうか。

派遣社員と派遣会社との雇用契約終了後に採用すべきです。

1.他社の従業員のスカウトは原則自由
 他社の従業員の自社への勧誘・スカウトそれ自体は違法ではなく、そのスカウトの方法が虚偽の悪評を告げたり、大量の引き抜きがあったりするなどの違法性がある場合に初めて損害賠償の問題となることは別に触れています(設問10-4-2参照)。派遣社員の場合も基本的には同じことです。
2.派遣法による転職の自由の確認
 むしろ、派遣社員の場合にはこの退職による派遣先への採用が派遣法によって保護されています(岩出誠「人材派遣をめぐる法律問題と今後の問題点」人材派遣会社便覧47頁以下参照)。つまり、派遣元事業主は、雇用する派遣労働者又は派遣労働者として雇用しようとする者との間に正当な理由なく派遣先である者(ないしあった者)又は派遣先となることとなる者に自己との雇用関係の終了後雇用されることを禁じる契約を締結してはならないし(33条1項)、又、派遣先である者(ないしあった者)又はなろうとする者との間でも同様の制限を受けているのです(33条2項)。
3.派遣社員の派遣先への就職に対する制限の困難
 結局、派遣社員の派遣先への就職に対する制限は、正当な理由のない限り、派遣元と派遣社員との雇用関係終了後については禁止されているのです。ここでの「正当な理由」については極めて高度な重要機密を持った派遣先の研究・専門職等の場合を除き、一般には余り見当らないようです。この禁止は私法上も効力がある強行規定となっていて、この禁止に違反する契約は無効とされ拘束力を持ちません。

対応策

基本的にはB社との話合いによるCの円満退職による解決が望ましいでしょう。法的には以上のように派遣社員CとB社との雇用契約期間中のスカウトを禁ずる契約がなければ元々問題ないのですが、仮にこのような契約があっても、CがB社との間の雇用契約終了後であれば問題ないことになります。中途解約もやむを得ない理由があれば不可能ではありませんが(民法628条)、混乱のタネになり易いので避けるべきでしょう。多くの派遣社員は、登録型で、一般労働者派遣事業の派遣元に期間雇用で雇用されているので(2条4号)、その期間満了まで待つべきでしょう。特定労働者派遣事業者からの常用型の派遣社員(2条5号)の場合には、BC間が期間の定めのない契約となっているため、CがB社に対して、B社の就業規則に従った退職手続を実行することが必要です。特にコンピューター関係では、いわゆるSE(システムエンジニア)の育成に膨大な投資をしている関係で、常用型も少なくなく、スカウトに対し抵抗も予想されるので、この点は慎重を期することが必要でしょう。
又、B社との雇用期間中にCに対し退職を働きかけたこと自体は問題となり難いのですが、前述のように、大量の引き抜きや、B社について「B社は倒産しそうだ」などと虚偽の悪評を用いれば、Cの退職の前後に拘らず損害賠償の問題を起こすことになるのでスカウトの方法にも要注意です。
なお、AB両社間の派遣契約自体が残っていても、B社とCの間の雇用契約が終了していればCのスカウトは可能ということになります。しかしCをスカウトされたB社が良い顔をする訳もなく、CのスカウトのためにはB社との契約が終了する時期を待つか、B社との間でCを採用することについて事前の連絡・協議や事後のフォローなどの配慮が必要でしょう。

予防策

先ず派遣契約を締結する際には派遣法による規制を踏まえた契約ができているかどうかをチェックすることです。第二には派遣社員を採用する際には派遣社員と派遣先との契約関係の終了をチェックしておくことです。第三に、スカウトについても、派遣社員からの自発的な採用申込みの形ができるように仕向けることが派遣元からの法的問題のみならず道義的な問題からの抵抗を少なくする一つの方法となるでしょう。第四に、以上の法的な問題やスカウト実行方法の注意点について派遣社員を使用する部署の管理職や人事担当者において充分に把握しておくことです。設問9-1-1に採用において試用期間の設定やその他の一般的な注意点も忘れてはなりません。正社員として採用した途端にメッキがはがれる例は枚挙にいとまがないからです。

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