個人会社を相続させるにはどのような手続が必要なのですか。
設問[12-2-1]のケースで、子供達に会社を相続させるには具体的にはどのような手続をとればよいのですか。
株式譲渡・営業譲渡・代表取締役の選任などの手続が必要です。
- 1.総論
- 会社を相続させるには、株式の譲渡・営業譲渡・代表取締役の選任等の手続が必要です(設問[12-2-1]参照)。
- 2.株式譲渡の手続
- 株式の譲渡においては、譲渡の意思と株券の交付が必要です。そして、株式の譲渡を受けた場合には、株式名簿の名義書換を受けなければなりません。閉鎖会社においては、株式の譲渡について取締役会の譲渡承認の決議が必要です。
- 3.代表取締役の選任
- 新たな代表取締役が既に取締役である場合には、取締役会においてその者を代表取締役に選任すればよいだけですが、その者が取締役ではない場合には、株主総会を開催してその者を取締役に選任した上で、取締役会において代表取締役に選任するという手続を経なければなりません。取締役会の決議は原則として頭数による多数決で、取締役選任の株主総会の決議は、普通決議であり、議決権の過半数の出席のもと、その出席株主の議決権の過半数の賛成が必要とされます。代表取締役が死亡した場合、定款において招集権者が特に定められていない限り、各取締役に株主総会の招集権限があります。
- 4.営業譲渡の手続
- 営業譲渡の手続については、設問[4-4-3]を参照して下さい。
- 5.個人保証問題
- 中小企業においては、会社の代表取締役が会社の債務について個人保証(連帯保証などの人的保証と自宅に抵当権を設定するなどの物的保証)をしている場合がほとんどです。従って、事業を承継するには、個人保証の承継手続をとらなければなりません。しかし、代表取締役になる者が担保物件を有しない場合などには、個人保証の承継が難しくなりますので、生前贈与や遺贈においては、株式の承継だけではなく、個人保証の承継も考慮に入れて、株式以外の財産の承継を考えておくべきです。
対応策
オーナーがきちんと事業承継についての方針を定めて法的準備を進めておかずに死亡した場合には、遺産分割がまとまらない間、取締役会も株主総会も開催されず、法律上会社の業務執行が滞る事態も生じかねません。予め遺言書などで十分に対処しておくべきです。
(C)2007 Makoto Iwade,Japan