法律Q&A

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オーナー会社の事業承継と相続対策

弁護士 船橋 茂紀
1997年4月:掲載(校正・大濱 正裕2007年12月)

会社を相続させる場合の税金が気になります。効果的な税務対策を教えて下さい。

当社は戦前から倉庫業を行っていますので、当社の主な資産は土地などの不動産ですが、相当な含み益をもっています。純資産を基準として株式が評価されると相続税が著しく高くなってしまいますので心配です。相続税を安くする方法を教えて下さい。

会社相続の税務対策は、自社株についての効果的な節税対策を行うことです。

1.課税の一般論
 中小企業において会社を相続させることは株式を承継させることですので、会社の相続についての課税関係は株式譲渡を巡る課税関係と考えることができます。そして、自社株を評価する方法は種々あります(設問[4-4-1]参照)が、評価にあたっては、会社の資産が一応の基準となります。ところで、会計原則においては、取得原価主義がとられていますので、会社の決算書には購入時の価格を基準として記載されています。しかし、自社株を評価する時には、時価主義が原則となりますので、地価が高騰している状況下にあっては、土地や借地権などの「含み益」を考慮しなければならないことになります。また、株式の譲渡については、平成元年4月1日以降、キャピタルゲイン課税がなされ、年中に発生した株式の譲渡益を確定申告し、右譲渡益につき他の所得と分離して20パーセントの税率の所得税が課されます(なお、上場株式等を証券会社を通じて譲渡した場合は一定の税金を源泉徴収するという方法も選択できます[源泉分離課税方式])。
2.自社株を巡る相続対策
(1)
自社株をいくらと評価するのかポイントです。自社株の評価をできるだけ下げるのが節税に役立ちますが、時価より著しく低い対価で財産を譲り受けた場合には、「時価」(相続税法上の時価である相続税評価額を言います。中小会社の評価方法としては純資産方式・類似業種比準方式・右両者の併用方式・配当還元方式があります。)と「譲渡価額」との差額に「贈与税」が課せられることになるので、適切な方法で右「時価」を下げることが必要になります。(2)
純資産価額を下げる方法としては、土地等の「含み益」を利用して、右を担保に借入をして土地上に建物を建築する方法が考えられます。建物の相続税評価額は固定資産税評価額ですので、時価の5~6割程度で評価されますので、含み益を半減させることができる訳です。また、「含み益」を有している資産を現物出資して別会社をつくって自社株の評価を下げる方法も考えられます(但し、一定の場合以外は課税関係が発生しますので注意が必要です)。

(3)
類似業種比準方式による評価額を下げる方法としては、大きな設備投資などをして意図的に赤字決算にしておいて株式を譲渡することや低配当政策を継続的に実行しておいて株式を譲渡することや特別の利益については「記念配当」とか「特別配当」とかの名称で区別して配当しておくとかの方法が考えられます。

(4)
増資手続を利用して株式評価を下げる方法も考えられます。増資の際に、新株引受権を譲渡したり、失権株を引受させたりして、会社の支配比率を徐々に移転する方法です。但し、右の場合には、時価と払込価額との差額が贈与とされて、贈与税が課されることを折り込んで引受株数を決定すべきです。

3.相続税の納付を助ける制度
 閉鎖会社において死亡したオーナーの主たる資産が当該会社の株式だけであり、相続税を納付するのに、右株式を譲渡して換金せざるを得ない事態が生じることがあります。しかし、閉鎖会社の株式は市場がないために売却は困難ですし、無理して売却すると相続を契機に会社にとって好ましくない第三者が会社に参加してしまうという不都合な事態が生じかねません。そこで、閉鎖会社においては、会社が右株式の相続人から一定の限度右株式を買い取れるようになっています(会社法174条。設問[3-2-8]参照)。

対応策

自社株の評価を下げるために、低廉な取引価格の事例を作っておく、土地などの含み益を利用して借入による建物を構築する方法、低配当政策にしておく方法、増資手続を利用する方法などが考えられます。

予防策

事前に専門家に相談して前もって会社の実体に合わせた相続対策を講じておくべきです。

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