- (1)月例賃金と賞与・退職金
- 前述の通り(P5-1参照)、多くの企業では、賃金体系として、月例賃金と、賞与(一時金)・退職金は規程上でも、別扱いとされています。
- (2)労基法上の賃金か
- そもそも、賞与や退職金が、労基法上の賃金に当たるかという問題があります。つまり、これらについては、法律上、その支払いが使用者に当然には義務づけられていないのです(P7-12参照)。そこから、前述(P5-1参照)の賃金に当たらない「任意的恩恵給付」等ではないかとの問題があります。この点につき、一般には、就業規則その他において支給基準が明らかにされており、使用者に支給義務がある場合には退職金は賃金に当たると解されています(P5-1参照)。これに対して、まったく使用者の裁量に委ねられた恩恵的給付のような退職金は賃金には当たらないことになります。しかし、退職金については、労基法 15条1項等により、退職金の定めをする場合は、退職金の計算方法などに関する事項を労働契約の締結の際に明示し、就業規則に規定しておかなければならないとされていることもあり、今日多くの企業では退職金規程などにより、制度化されていて、上記判断基準によれば、多くの場合、退職金は賃金に当たるといえるでしょう(P7-12参照)。賞与についても同様に、支給基準が明らかで使用者に支払い義務があるものは賃金に当たります。但し、いずれの請求権も各企業の制度に基づく制限を受けます。
- (3)労基法上の取扱の違い
- 以上の基準に照らし、労基法上の賃金とされる退職金に関しては、一定の条件の下、いわゆる銀行振出の小切手による支払が認められ、賞与・退職金に関しては、毎月1回以上定期日払の原則が適用されません(P5-2参照)。なお、退職金の支払時期につき定めがなければ退職後の請求後7日以内に支払う義務がありますが(同23条1項)、定めがあれば、長期分割や退職後数箇月先の支払も認められています。